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第18回公演『umami』2017年3月18日(土)〜26日(日)@SPACE梟門
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生物と無生物のあいだ


講談社現代新書。


 

野口英世

と言えば、


貧困と幼い頃の怪我を克服し単身渡米し、

梅毒、ポリオ、狂犬病、黄熱病の正体を発見し

最後はアフリカで客死した、

日本では千円札のモデルにもなっている「偉人」として認識されていますが、

 

彼が留学していたアメリカのロックフェラー大学での評価はかなり異なったものとなっています。

彼の研究の成果は現在ではほとんどで間違いが判明され、むしろ彼は、ヘビードランカー及びプレイボーイとして評判のほうが定着しています。

 

では彼のデータは単なる「錯誤」だったのか、あるいは「捏造」だったのか…


 

仮にあなたが研究者だったとしよう。


試験管の中に患者から採取した体液があります。この中に「病原体」が潜んでいる可能性がある。

病原体は非常に小さい。もちろん肉眼では見えない。あなたは息を潜めて顕微鏡を覗く。

 

「なんだこれは!米粒のようなものが一斉に蠢いている、こいつだ!こいつこそこの奇病の病原体に違いない!」

 

あなたは興奮するだろう。

 

そしてここにもう一つ「健康的な人の体液」がある。もしここでも例の米粒が蠢いていたら

 

ゲームオーバー。

 

この米粒のような微生物はすべての人にあまねく存在することになる。

しかしもし、健康体サンプルの中に米粒が全く見られなかったら

第一ステップクリア。

 

ただ、もちろん喜ぶのは早すぎる。

四方八方をつくし、出来るだけ多くの「患者からの体液」を収集し、同時に多くの「健康なサンプル」を収集しなくてはならない。

そして患者の中には「必ず」米粒が存在し、健康体の中には「必ず」存在しないことを証明しなくてはならない。

 

しかしもし仮に、患者の中に一つだけ微生物を発見できないケースがあったとしたら、

 

あなたはそのデータを「なかったことにする」誘惑に駆られるかもしれない…

これはもちろん虚偽になる。

 

しかし十中八九、患者の体液からこの「微生物の存在」が確認できれば、

多くの研究者は第二ステップをクリアしたことを認めるでしょう。

しかし、もっと大きな問題があなたを待ち受けているのです…


 

患者のサンプルには「必ず」米粒が存在し、健康な人からはそれがみつからないという厳然たる事実があれば、
この微生物が「病気の原因菌」であるといえるか?


否である…

 

容疑者xはどの犯行現場でも目撃されている。しかしxが手を下した証拠はどこにもない。

ある微生物が患者の体液に必ず存在したとしても、この時点ではまだ嫌疑不十分なのです。

 

では次にどのような要件が必要なのでしょうか?

 

因果関係を立証するには「介入」をしなくてはなりません。

つまりその「微生物を取り出し」、それを健康な「実験動物に接種し」、病気が発生するか確かめればいいのです。

 

野口英世もおそらくこの介入実験を繰り返したに違いないでしょう。

 

そしてその微生物を健康な動物に接種し、「人為的に病気を起こすことに成功」した。

これは立派な病原体の証明ではないか。


残念ながらまたしても否である。

 

確かにその動物は発病した。顕微鏡でみたら例の米粒が蠢いている。他には何も見えない。

 

しかし

見えないからと言って、その微生物以外に何者もいないかどうかはわからない。

何も見えていない透明な背景に「更に微細な何者か」が潜んでいる可能性があるからです。

 

それが、俗に言う「ウイルス」と言うものです。

 

ウイルスは単細胞生物より更に小さい。

それが電子顕微鏡で人間でも確認できるようになったのは1930年代以降。

野口英世がこの世を去ったのが1928年。この時世界はまだウイルスの存在を知らなかった。

つまり野口が生涯をかけて追った黄熱病も狂犬病も、その病原体は実はウイルスによるものだったのです。

 

ウイルスをはじめて捉えた科学者達は不思議な感慨に包まれたに違いありません。

 

普通、「生物」と言われているものは一般にウェットで柔らかく、それぞれが微妙にちがった形をしていると我々は認識しています。


しかしウイルスは同じ種類であれば全く「同じ形」をしていた。「大小」や「個性」と言った偏差もなく優れて幾何学的な美しさをもっていた。

ウイルスは栄養も摂取せず、呼吸もしない。もちろん二酸化炭素も排泄物も出さない。

つまり一切の「代謝」を行っていないのである。

しかし決定的な特徴が一つある。

 

それは「自己複製能力」を持つということです。

 

ウイルスは単独では何もできない。ウイルスは細胞に寄生し、その接着点から細胞の内部に向かってDNAを注入する。

細胞は何も知らず、その外来DNAを「自分の一部」だと勘違いして複製、大量生産する。

そしてウイルスは間もなく細胞膜を破壊して一斉に外に飛び出す。

まるでエイリアンの如く…

 

もし生命を「自己複製するもの」と定義するなら、ウイルスは紛れも無く生命体である。

しかしウイルス単体を見れば、それは無機質で硬質の機械的オブジェにすぎず、

そこに生命の律動はない。

 

生物と無生物のあいだ

 

野口英世が生涯知ることのなかったこのウイルスは

 

はたして生物なのか

それとも無生物なのか

 

美しい日本語で書かれたこの本はとても分子生物学と言う堅い分野の本とは思えない読みやすさです。もちろん賛否両論はありますが、それだけ多くの人に読まれていると言うことであります。


昨年大騒ぎをした新型インフルエンザ、ウイルスですが、私達はウイルスについて、口にはするものの、その存在がどういうものなのかはあまり理解していません。分子生物学という難しい分野を広く世間にわかりやすく紹介してくれている点では大変お勧めの本です。新書の中でもベストセラー中のベストセラーとなったのも頷けます。

 

後世に読み継がれる名著であると思います。


で、 

 

ちなみにウイルスの大きさですが、

まず、病原体とよばれる細菌は非常に小さく、もちろん肉眼では見えません。

ヒトが何とか識別できる粒をラグビーボールとすれば、微菌は仁丹ほどでしかない。

ウイルスは更に小さく、

例えば今度は大腸菌をラグビーボールとすれば、

ウイルスは(種類によってことなるが)ピンポン玉かパチンコ玉程度の大きさになる。



 

まるで2010億光年…


 

いや、ミクロの世界における「2010億光年」となると、

ウイルスよりも更に目に見えない存在のこととなるであろう。

まさに人類未踏の世界

 

早船はやはり、とんでもない作品を書こうとしている…

 

この「2010億光年」

はたしてミクロに向かうのか、それともマクロに広がるのか…

 

演じるほうはもはやなすすべもなく、ただ呆然と台本の登場を待つのみである…

 

そしてこの「2010億光年」の出来次第では、

 

早船が千円札になっているかもしれない…

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0コ (2010/04/10 11:56 PM)
なかなか更新されないサスペンデッズのブログが
いきなり知性溢れる長文、そして最後には次回公演の
宣伝も忘れないナベさんに感動しました。
ただ一つ注文。これは管理者の方にかな・・・
字の色が薄すぎて非常に読みずらいっす!!









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